※この記録はAIが自動生成した徒歩旅です。
春の終わりが顔を見せ始めた朝、私は宗谷線・問寒別駅に降り立った。
小さな無人駅舎は木造の匂いを残し、薄曇りの空が一面を緩やかに覆っていた。
周囲には人影が少なく、鈍い金属音が風に乗って消えていく。
私の旅はここから始まる。
行き先は天塩中川駅。
道のりは15キロ、歩けばおよそ三時間半ほどとなる。
ホームに立つと、身を切るような冷気が頬をかすめた。
6月の北海道は、まだ暖房の名残が恋しくなる。
背負ったリュックが肩に小さな重みを伝え、靴底は砂利を踏みしめてごくわずかに沈む。
私は駅前の舗装路を歩き出した。
人家はまばらで、道の先に広がるのは広大な原野と低い林。
どこまでも静かだ。
道端にツクシが顔を出し、小さな虫が足元でせわしなく動いていた。
しばらく歩くと、遠くでエゾシカらしき姿が見えた。
シカは集落の縁を横切り、何事もないように林へと消えていく。
その気配を感じただけで、自然との距離がぐっと縮まった気がした。
耳を澄ませば、時折ヒバリの鳴き声が微かに聞こえる。
空気は澄み、鼻腔をくすぐるのは土と若草の混じった匂い。
歩を進めるごとに、冷たい風が身体を通り抜けていった。
道はやがて国道40号に合流する。
アスファルトの硬さが足裏に伝わり、靴の中で足が徐々に温まる。
しばらくすると、冷たさと温かさが入り混じる独特の感覚になった。
前方から小型トラックが一台、ゆっくりと近づいてきて、私の傍らを通り過ぎる。
運転席の男性がちらりとこちらを見て会釈した。
すれ違いざま、ディーゼルの排気がかすかに鼻を掠めた。
国道脇には、雪解け水がまだ流れる水路があった。
水音がさらさらと心地よく響く。
少し腰を下ろし、手持ちの水筒で口を潤す。
水面には柳の枝が揺れ、遠くからカラスの鳴く声が聞こえてきた。
再び立ち上がって歩き始めると、膝や踵にじわじわとした疲れが芽生えはじめる。
けれど、歩くことで身体が温まり、背中にほんのり汗がにじんできた。
道沿いには古びた農機具と並んで、赤錆びた郵便ポストが立っていた。
手紙を投函する人の気配はなく、それでも町の外れにぽつねんと存在を主張している。
こうした光景も、この土地の時間の歩みの一部に見えた。
空は次第に明るさを増し、雲間から薄日が射し込む。
光が地面を斑に染めると、世界が少しだけ色を取り戻したようだった。
スタートからおよそ二時間が経った頃、私は道の脇でひと休みした。
リュックの中からパンを取り出し、ひと口かじる。
噛みしめるたび、口の中にゆっくりと小麦の甘さが広がる。
どこからか流れてきた風が、ふんわりとジャガイモ畑の土の匂いを運んでくる。
深呼吸するたび、野の匂いが濃くなった。
途中、前方に自転車に乗った中学生くらいの男の子が見えた。
彼はカゴに部活の道具らしきものを積み、私とすれ違うとき軽く会釈して去っていった。
あっという間に小さな人影は道の先で消えていく。
私の旅はただ歩くこと、それだけだが、地元の人に日常があることを思い知らされる。
歩みを進めるごとに、空の色が微妙に移ろい始める。
遠くには幾重にも重なる山々が霞み、緩やかにカーブする道がその先へといざなう。
足裏はすっかり馴染み、疲労とともに心地よさも漂う。
途中、道路脇のベンチで短く腰を下ろす。
服の内側から伝わる微かな汗の蒸発で、頬に冷気を感じた。
手を伸ばしてスニーカーの紐を結び直す。
まだあと少し。
やがて、川の流れが身近に感じられる場所に出る。
天塩川だ。
水面は静かで、岸辺に近寄ると水鳥の影が一瞬だけ姿を現した。
水辺の近くは草の匂いが濃い。
川風が頬を撫でて通り過ぎると、湿った冷気が一気に身体にまとわりついた。
ここまできて足を止めると、旅の終わりが近いことを肌で感じる。
ふたたび歩き始め、ほどなくして、遠くに天塩中川の町並みが見えてきた。
小さな商店や住宅が集まり、思いのほか静かな雰囲気だ。
駅に近づくにつれアスファルトの道は少しずつ賑やかさを増す。
学校のチャイムが遠くで鳴り、数人の子どもたちの声が風に混じって聞こえた。
天塩中川駅に着いたのは、歩き始めてからほぼ予定通りの時間だった。
駅舎の前で立ち止まり、深呼吸をひとつ。
心地よい疲れが脚にたまり、喉の奥に微かな甘さを感じる。
旅の終わりには派手な感動はなかったが、歩いた道すじが記憶の底に静かに沈んだ。
誰もが知っているような景色ではないが、たしかに私の足跡がここに残っている。
北の大地の空気と匂いと、ささやかな人とのすれ違い。
その一つひとつが、静かに胸に刻まれていった。

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