問寒別⇒天塩中川_徒歩202分_長い午後の影

※この記録はAIが自動生成した徒歩旅です。

春の終わりが顔を見せ始めた朝、私は宗谷線・問寒別駅に降り立った。
小さな無人駅舎は木造の匂いを残し、薄曇りの空が一面を緩やかに覆っていた。
周囲には人影が少なく、鈍い金属音が風に乗って消えていく。
私の旅はここから始まる。
行き先は天塩中川駅。
道のりは15キロ、歩けばおよそ三時間半ほどとなる。

ホームに立つと、身を切るような冷気が頬をかすめた。
6月の北海道は、まだ暖房の名残が恋しくなる。
背負ったリュックが肩に小さな重みを伝え、靴底は砂利を踏みしめてごくわずかに沈む。
私は駅前の舗装路を歩き出した。
人家はまばらで、道の先に広がるのは広大な原野と低い林。
どこまでも静かだ。
道端にツクシが顔を出し、小さな虫が足元でせわしなく動いていた。

しばらく歩くと、遠くでエゾシカらしき姿が見えた。
シカは集落の縁を横切り、何事もないように林へと消えていく。
その気配を感じただけで、自然との距離がぐっと縮まった気がした。
耳を澄ませば、時折ヒバリの鳴き声が微かに聞こえる。
空気は澄み、鼻腔をくすぐるのは土と若草の混じった匂い。
歩を進めるごとに、冷たい風が身体を通り抜けていった。

道はやがて国道40号に合流する。
アスファルトの硬さが足裏に伝わり、靴の中で足が徐々に温まる。
しばらくすると、冷たさと温かさが入り混じる独特の感覚になった。
前方から小型トラックが一台、ゆっくりと近づいてきて、私の傍らを通り過ぎる。
運転席の男性がちらりとこちらを見て会釈した。
すれ違いざま、ディーゼルの排気がかすかに鼻を掠めた。

国道脇には、雪解け水がまだ流れる水路があった。
水音がさらさらと心地よく響く。
少し腰を下ろし、手持ちの水筒で口を潤す。
水面には柳の枝が揺れ、遠くからカラスの鳴く声が聞こえてきた。
再び立ち上がって歩き始めると、膝や踵にじわじわとした疲れが芽生えはじめる。
けれど、歩くことで身体が温まり、背中にほんのり汗がにじんできた。

道沿いには古びた農機具と並んで、赤錆びた郵便ポストが立っていた。
手紙を投函する人の気配はなく、それでも町の外れにぽつねんと存在を主張している。
こうした光景も、この土地の時間の歩みの一部に見えた。
空は次第に明るさを増し、雲間から薄日が射し込む。
光が地面を斑に染めると、世界が少しだけ色を取り戻したようだった。

スタートからおよそ二時間が経った頃、私は道の脇でひと休みした。
リュックの中からパンを取り出し、ひと口かじる。
噛みしめるたび、口の中にゆっくりと小麦の甘さが広がる。
どこからか流れてきた風が、ふんわりとジャガイモ畑の土の匂いを運んでくる。
深呼吸するたび、野の匂いが濃くなった。

途中、前方に自転車に乗った中学生くらいの男の子が見えた。
彼はカゴに部活の道具らしきものを積み、私とすれ違うとき軽く会釈して去っていった。
あっという間に小さな人影は道の先で消えていく。
私の旅はただ歩くこと、それだけだが、地元の人に日常があることを思い知らされる。

歩みを進めるごとに、空の色が微妙に移ろい始める。
遠くには幾重にも重なる山々が霞み、緩やかにカーブする道がその先へといざなう。
足裏はすっかり馴染み、疲労とともに心地よさも漂う。
途中、道路脇のベンチで短く腰を下ろす。
服の内側から伝わる微かな汗の蒸発で、頬に冷気を感じた。
手を伸ばしてスニーカーの紐を結び直す。
まだあと少し。

やがて、川の流れが身近に感じられる場所に出る。
天塩川だ。
水面は静かで、岸辺に近寄ると水鳥の影が一瞬だけ姿を現した。
水辺の近くは草の匂いが濃い。
川風が頬を撫でて通り過ぎると、湿った冷気が一気に身体にまとわりついた。
ここまできて足を止めると、旅の終わりが近いことを肌で感じる。

ふたたび歩き始め、ほどなくして、遠くに天塩中川の町並みが見えてきた。
小さな商店や住宅が集まり、思いのほか静かな雰囲気だ。
駅に近づくにつれアスファルトの道は少しずつ賑やかさを増す。
学校のチャイムが遠くで鳴り、数人の子どもたちの声が風に混じって聞こえた。

天塩中川駅に着いたのは、歩き始めてからほぼ予定通りの時間だった。
駅舎の前で立ち止まり、深呼吸をひとつ。
心地よい疲れが脚にたまり、喉の奥に微かな甘さを感じる。
旅の終わりには派手な感動はなかったが、歩いた道すじが記憶の底に静かに沈んだ。
誰もが知っているような景色ではないが、たしかに私の足跡がここに残っている。
北の大地の空気と匂いと、ささやかな人とのすれ違い。
その一つひとつが、静かに胸に刻まれていった。

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