糠南⇒問寒別_徒歩38分_寄り道の誘惑

※この記録はAIが自動生成した徒歩旅です。

宗谷線の小駅、糠南。
今朝の空は薄曇りで、時折陽が雲の切れ間から差し込む。
六月の北海道は、どこかまだ春の名残を感じさせる。
私は電車を降り、静かなホームに立った。
足元には白い砂利と、踏み固められた土。
駅舎は簡素で、木製のベンチがひとつ。
ここから問寒別まで歩いてみようと決めていた。

駅を出ると、空気はひんやりしている。
長袖のシャツの上から、風がじわりと肌を撫でる。
耳を澄ますと、遠くでカラスが鳴いている。
人の声はない。
小さな駅の周りは広い原っぱと畑が広がり、道路沿いには野草がちらほら。
踏み出した足裏に、砂利道のざらつきと小石の硬さが伝わる。
歩き始めてすぐ、線路沿いはしばらく静かな一本道だ。

進むうちに、匂いが変化する。
湿った土と、ほんのりと草の甘い香り。
時折、農家の納屋から漂うかすかな肥料の匂いも鼻に届く。
無機質なコンクリートやアスファルトより、土の道は足に優しい。
歩くごとに、靴底が草や土に押し込まれる感触が心地よい。

道ばたにはタンポポやヨモギ、名も知らぬ紫色の花が咲いている。
立ち止まり、手で触れてみる。
茎は柔らかく、葉は指先にしっとりとした感触を残す。
しばし目を閉じて、静けさを味わう。
車のエンジン音は聞こえない。
遠くで風が草を揺らす音だけ。

歩いて十五分ほど経つと、農家らしい家屋が見える。
誰もいないが、庭先に犬が一匹寝そべっている。
私と目が合うと、首をもたげてこちらを見る。
吠えることもなく、再び目を閉じてしまった。
静かな土地だ。
道の反対側では、カラスが畑に降り立ち、何かをつついている。
私も足を止めて少し眺める。
畑の畝に、まだ若いジャガイモが植えられているのが見える。

さらに進むと、道は小さな川を渡る。
橋は簡素な鉄製で、手すりに錆が浮いている。
川の水は透明で、岸辺にはフキや葦が生えている。
水面をじっと見つめると、小魚が何匹か泳いでいるのが分かる。
橋の上は風が強く、体温が少し奪われる。
肌寒さに襟を立てる。
川の流れとともに、冷たい空気が頬を撫でて過ぎていく。

橋を渡ると道は少し曲がり、森の端をかすめる。
木々はまだ若く、白樺やカラマツが混じっている。
葉が擦れ合って、しゃらしゃらと音を立てる。
林の奥には、鳥の鳴き声が高く響く。
時折、ヒバリらしい鳴き声も混じる。
空には雲が増え、陽射しが弱まった。

しばらく森沿いを歩き、また開けた畑地へ出る。
ここでは、もう人家は見当たらない。
道沿いの草むらには、虫の声が絶え間なく響く。
アブやハチが飛び交い、足元を小さなアリが通過する。
歩く速度は、自然とゆっくりになる。
足裏には砂利の硬さと、たまに踏み抜く柔らかい土の感触が交互に訪れる。

空気はさらに冷たくなり、時折霧雨がほんのりと舞う。
服に水滴がつくほどではないが、湿り気が増していく。
立ち止まり、空を見上げると低い雲が広がっている。
息を吸い込むと、湿った草の匂いが濃くなった。
周囲には人影はない。
車道に車が一台通り過ぎるだけで、運転席の人物とは目が合わなかった。

歩くうちに、電柱と道路標識が増えてくる。
問寒別が近い。
道ばたには、古びたバス停のベンチがぽつんとあった。
腰を下ろし、飲み水のペットボトルを口にする。
冷えた水が喉を潤し、体に染み渡る。
遠くで、農機の音が微かに聞こえたが、すぐに消えた。

ベンチから立ち上がり、再び歩き出す。
町の入口には、問寒別の名前が書かれた標識がある。
周囲の家屋はどこも静かで、庭先に人がいない。
道沿いの花壇には、パンジーやビオラが植えられている。
足元の舗装路は滑らかで、靴底の感触が変わる。
砂利道からコンクリートへの移り変わりを、歩くことで確かめる。

駅まではもう少し距離がある。
途中、町の公園へ寄り道する。
ベンチと遊具、盛り土で作られた小さな丘がある。
ここでも誰もいない。
静かな町の昼下がり。
公園の端で、白樺の木が並び、葉がそよいでいる。
木の下に腰を下ろし、しばらく空を眺める。
雲は低く、風が吹き抜ける音が心地よい。

再び立ち上がり、問寒別駅へ向かう。
駅舎は糠南よりやや大きいが、やはり人の気配は少ない。
ホームに上がると、鉄道のレールが真っすぐ北へと延びている。
時折、列車の通過音が遠くから響くが、今は静かだ。
足元にはコンクリートと古びた枕木。
冷たい空気が駅舎の中に満ちている。

道中、すれ違ったのは犬とカラス、農機の音だけ。
人の影はほとんどなかった。
北海道の原野は広く、静けさが深い。
歩きながら、足裏の感覚や風の冷たさ、草の匂いひとつひとつを記憶に留めた。
問寒別に着く頃、空は薄暗くなり始めていた。
靴底についた土を軽く払って、駅のベンチに腰を下ろす。

この道のりは、何もないようでいて、五感で確かめるには十分な旅だった。
静かな時間と、ひとつひとつの風景が、心に残る。
北の土地の冷たさとやさしさ、その両方を感じることができた。

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