南幌延⇒雄信内_徒歩111分_長い午後の影

※この記録はAIが自動生成した徒歩旅です。

南幌延駅の小さなホームに降り立った瞬間、朝のひんやりとした空気が肌にまとわりつく。
足元の砂利は夜露でしっとりと湿り、踏みしめるたびに鈍い音がした。
私は身支度を整え、宗谷本線に沿って雄信内駅へ向かう歩みを始めた。

空は曇天。
分厚い雲の切れ間から、ほんの少しだけ青が覗く。
北海道の初夏らしい涼しさで、体を包む風には少し土と草の匂いが混じっている。
伸びきった線路沿いの草むらの中で、ヒバリが高く鳴いていた。
遠くに見える防風林が、北の大地をやわらかく区切っている。

歩き始めて間もなく、国道40号のアスファルトに出る。
こちらの道は車通りが少なく、時折、軽トラックがエンジン音を響かせて横を通り過ぎていく。
車の音が消えたあとは、むしろ静けさが際立つ。
遠くから牛の鳴く声が風に乗って聞こえ、牧場の匂いがうっすらと漂ってきた。

道ばたでは、草花が揺れている。
よく見ると、アカツメクサやタンポポがそこここに咲いている。
足裏に伝わるアスファルトの感触は、まだ朝の冷たさを残していた。
私は歩調を整え、時々深呼吸をしながら進む。
深い呼吸をすると、空気が体の中まで澄みわたるようだ。

歩き出して30分ほど。
右手に広がる畑には、ジャガイモや甜菜らしい作物がきれいに並んでいる。
作業トラクターのエンジン音が遠くに響き、時おり土埃が風に舞って私の顔にかかる。
農作業中の人影は見えなかったが、畑の整然とした様子から、朝早くから誰かが働いていた気配がある。

その先で、小さな川を渡る。
コンクリートの橋の上で立ち止まると、川面に風が走り、さざ波がきらきらと光った。
水の流れの音は思いのほか速い。
両岸にはヨシやスゲが茂り、川辺で小さな鳥が水浴びをしていた。
川面から立ちのぼるひんやりとした空気が足元まで届き、いっとき涼しさが増す。

川を渡った先からは、道は緩やかに上り坂になる。
両側の草原が広がり、時折、黄色い野花がぽつぽつと咲いている。
足裏に感じる地面は次第に乾き、朝の冷たさが少しずつ薄れていく。
歩くたび、靴の下で小石がコロコロと音を立て、踏みしめる感覚が変わっていくのがわかる。

途中、道端に古びたベンチがひとつ置かれていた。
腰かけて一息つく。
ベンチの木は日差しに焼け、ざらりとした手触り。
ポケットの中で少しだけ温まった水を飲む。
首筋に風が触れ、遠くの木立を見ながら、静かな時間を味わう。
ベンチのそばには小さな白い花が咲いており、その香りがわずかに漂ってくる。
ふと視線を上げると、青い自転車に乗った少年が国道を横切っていった。
こちらに気づいて軽く会釈を返すと、すぐに遠ざかっていった。

再び道を歩き始める。
気温は変わらず涼しいままだが、背中にじんわりと汗がにじみはじめる。
歩くごとに鼻に感じる土の匂いが濃くなり、あぜ道の奥からはときどきカエルの声が響く。
目の前を小さな茶色いキツネが素早く横切り、しばらくするとその姿は笹の影に消えた。

1時間ほど歩いた頃、遠くに赤い屋根の民家が見え始めた。
周囲には畑と森が交互に現れる。
大きなミズナラの木陰が道を覆っており、そこに入ると途端に空気がひんやりと変わる。
木漏れ日が足元にまだら模様を作り、風で葉がさらさらと鳴っている。
私は帽子を取り、しばし頭から汗を拭った。

その先、道端の用水路で地元の高齢の男性がなにやら作業をしていた。
ぎこちない「こんにちは」の挨拶を交わし、男性はにこりと笑った。
ほとんど会話はなかったが、静かな土地の日常の一端を垣間見る気がした。

再び国道に戻り、ひたすら北へ歩く。
車の音もまばらになり、時折エゾシカ注意の標識が現れる。
道端には、つい先日刈られた草が山になっていた。
生乾きの青草の匂いが濃く、時折風が運んでくる。
靴底に草がくっつき、少し歩きにくい。

歩き始めから1時間半ほど。
行き交う人の姿はほとんどない。
時折、郵便配達らしいバイクが遠ざかる。
私はリュックの重さを肩に感じつつ、少しだけ足取りをゆるめる。
道の先に見えていた森が、やがて低木に変わる。
空は相変わらず雲が厚いが、時々隙間から日が差すようになった。

最後の緩い坂を下ると、雄信内の集落がちらほらと現れる。
木造の住宅や倉庫、そして遠くに見える雄信内駅の建物。
宗谷本線の線路が再び近づき、列車のいない静かなホームが視界に入る。
駅舎の前にある自動販売機の横で、地元の中学生が自転車にまたがって話していた。
日常の空気が、どこか懐かしい。

私は静かに駅のベンチに腰を下ろした。
足裏にはしっかりとした疲労が残り、膝の内側が少し張っている。
両手で顔を覆って深呼吸。
冷たさと温かさが入り交じった風が頬を撫でた。
聞こえるのは鳥のさえずりと、線路沿いを駆け抜ける風の音だけ。
歩いてきた道のりを思い返し、しばしの静寂を楽しむ。

北の大地の風景は、静かで、どこまでも素朴だった。
人の気配も、風の匂いも、すべてが淡く、やさしい余韻を残してくれる。
次の列車が来るまでの時間、私は何もせずにただ、この場所の空気を味わい続けた。

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