兜沼⇒豊富_徒歩226分_長い午後の影

※この記録はAIが自動生成した徒歩旅です。

兜沼駅は、うっすらと霧のかかった朝を迎えていた。
ホームから一歩外に出ると、空気がひんやりと肺の奥まで染み渡る。
初夏の北海道は、思いのほか涼しい。
息を吐くと白くはならないが、手の甲に触れる風は冷たさを含んでいる。

線路沿いに数軒の家々が並ぶが、ほとんどの窓はまだ閉じられたまま。
静けさを破るのは、遠くで鳴くカッコウの声と、線路の砂利を踏みしめる自分の足音だけだ。
スニーカー越しに伝わる地面は、夜露を含んでやや柔らかい。
小さな石が靴底を押し上げる感覚は、適度な刺激となって足を目覚めさせる。

枕木をまたぐようにして国道40号のほうへ向かう。
道端には、背の高いヨモギやタンポポが群れをなして生えている。
手を伸ばせば茎に朝露が溜まっていて、指先がじっとりと濡れる。
鼻をくすぐるのは、湿り気を帯びた土の匂いと、ほんのり青草の青い香りだった。

歩き始めの風景
歩き始めの風景

やがて民家も途切れ、視界が開ける。
左右には広い牧草地が広がっている。
道はまっすぐで、前方に薄く連なる山並みが見える。
風が少し強くなってきて、帽子が飛ばされそうなので、頭を抑えながら歩く。
耳に届くのは、時折トラクターが遠くで動く低いエンジン音と、風が草原を渡るざわめき。
誰もいない道を歩いているのに、自然の音があるおかげで孤独は感じない。

道の脇に、古びたバス停の標識が立っていた。
時刻表は日焼けして文字がかすれ、ほとんど読めない。
ベンチは苔むしていて、雨ざらしの年月を思わせた。
ここで少し足を休める。
座面はまだ冷たい。
リュックから水筒を取り出し、一口含む。
冷たさが喉を滑り落ちる感覚が心地よい。

立ち上がり、また歩き出す。
足裏はそろそろ熱を帯びてきた。
アスファルトの固さがじかに伝わる。
歩くうち、左足の小指が靴に当たりそうになるが、姿勢を調整しながら進む。

途中、軽トラックが1台、ゆっくりと私を追い越していった。
窓越しに運転席の高齢の男性が軽く手を挙げてくれた。
こちらも少し会釈をする。
見知らぬ人との、ささやかな交流。
北海道の田舎道、歩いているとこうした瞬間が不思議と心に残る。

11キロ地点あたり、道端に小さな用水路がある。
水がさらさらと流れて、日差しが水面できらきらと踊っている。
近くに咲く野の花、紫色のクサフジや白いシロツメクサに、蜜蜂が潜っているのを見つけた。
しゃがんでじっと観察していると、蜂たちは全く気にする様子もなく花から花へと移る。
彼らの忙しなさに少し元気をもらい、また歩き始める。

道すがらの一景
道すがらの一景

天気は次第に良くなり、雲が切れて青空が広がってきた。
日差しは強くなるが、空気が乾いているためか汗はそれほどかかない。
風が肌をすっと撫でていく。
丘陵地帯に入ると、道は緩やかなアップダウンを繰り返す。
足裏の負担を感じながらも、時折立ち止まり、振り返って歩いてきた道の遠さに驚いた。

午後に近づくと、遠くに風力発電の大きな風車がいくつか見えてくる。
白い塔が回転し、低くうなる音が微かに届く。
ここまで来ると、豊富の市街地はもう間近だ。

16キロ地点を過ぎたころ、道路脇のベンチで休んでいる年配のご夫婦に出会った。
こんにちは、と声をかけると、豊富から来てちょっと散歩しているのだという。
少しだけ会話を交わし、「よく歩いてきたね」と声をかけてもらう。
人の温もりを感じて、体力も気持ちも少し持ち直した。

やがて道路が広くなり、民家が増えてくる。
牛舎のにおいが風に乗って漂い、豊富町が近いことを実感する。
大型トラックの音も混じり始め、時折自転車の高校生がすれ違う。
町に戻ってきたのだと、少しほっとする。

豊富駅前に着いたのは、出発から4時間近くが過ぎたころだった。
駅舎はこぢんまりとしていて、周囲には商店やバス停が点在している。
ベンチに腰かけて靴を脱ぐと、足指がじんじんと熱を持っている。
歩き切った充足感と、心地よい疲労が身体を包む。

ゴール手前の気配
ゴール手前の気配

振り返れば、兜沼から豊富までの16.9キロは、淡々とした一本道だった。
しかし、音や匂い、風や土地の感触が、私の中に揺るぎない記憶として残った。
時にはただ歩くことにも、旅の意味は見いだせるのだろう。

ベンチに座りながら、やや赤くなった足裏をさすり、次の目的地について静かに思いを巡らせた。

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