※この記録はAIが自動生成した徒歩旅です。
筬島駅を降りた時、ホームに漂う空気は少し湿っていた。
朝方まで雨が降っていたのか、線路脇の草が瑞々しく光っている。
空はまだ灰色が残り、雲の切れ間から薄く日が射し始めていた。
吐く息に白さはなく、気温は初夏の北海道にしてはやや冷たいくらい。
私はリュックのストラップを直し、深く息を吸った。
草いきれと、どこか遠くで燃やしているような淡い煙の匂いがした。
筬島駅は小さな無人駅だ。
列車の音が遠ざかると、辺りは驚くほど静かになる。
ホームから一歩、国道へと向かう道へ足を踏み出す。
砂利に靴底が沈む感触が伝わってきて、その下で細かな石がこすれる音が耳に残る。
駅前の道は広くない。
両脇には民家がぽつぽつとあるが、人の気配はない。
軒下にはまだ濡れた自転車やいくつかの農具。
戸の隙間から、うっすらとストーブのにおいも感じた。
やがて家並みは途切れ、小さな畑と草原が広がった。
歩くたびに、足裏に伝わる感触が変わる。
アスファルトから土道に切り替わると、少し柔らかく沈む。
雨上がりのせいもあって、足が少し滑る。
遠くに宗谷線の線路が見え隠れする。
道は線路と並行して続いている。
鳥の鳴き声が響く。
カッコウの声が遠くから、すぐ近くではスズメ。
時折、ヒバリが高く鳴いていた。
風が弱く吹いて、背中を押す。
草の先が擦れあい、ささやかな音を立てる。
ふと、川の流れる音に気がついた。
国道40号の脇を流れる小さな渓流だ。
水は透明で、石がゴロゴロしている。
流れのそばに立つと、足元の石が濡れて滑る。
何気なくしゃがんで、冷たい水に指を浸した。
水の冷たさが指先をしびれさせ、ほんのり土の匂いが漂う。
ここでほんの数分、目を閉じて水音を聞いた。
列車の音も車の音も聞こえない。
周囲はただ水と風と鳥だけだ。
再び歩き出す。
舗装路に戻ったとき、後ろから車が一台やってきた。
すれ違う際、運転席から小さく会釈された。
地元の人らしい、無駄のない挨拶。
旅人の私は、そっと頭を下げる。
その後も、すれ違う人はほとんどいない。
たまに畑で作業をしている人がいるくらいだ。
黙々と鍬をふるう姿を横目に見て通り過ぎる。
景色は単調だが、変化もある。
道の左手には時々、防風林が現れる。
白樺が多い。
幹が陽に透けて明るく、葉がまだ若いせいか、どこか頼りなげな緑色をしている。
足元にはタンポポとシロツメクサが混じって咲く。
時折、タンポポの綿毛がふわりと浮かぶのが目にとまる。
30分ほど歩いたころだったか、足が少し重く感じてきた。
靴の中で靴下が湿ってきている。
土道を歩いたせいだ。
自販機も店もないので、持参した水筒で喉を潤す。
水はまだ冷たく、ゴクリと飲むたびに身体の中が冷える。
地面を踏みしめる音がリズムになって、自然と歩調も一定になる。
雲が切れて日射しが強くなってきた。
風が当たると肌にひんやりとした感覚が残るが、日差し自体は思いのほか熱い。
シャツの背中がじわりと汗ばんでくる。
ふと道端に小さな木陰を見つけて、少し休む。
腰を下ろすと、土の匂いが鼻をくすぐる。
草むらからはバッタが跳ねる音。
周囲には虫の羽音も混じる。
やがて再び歩き出した。
遠くに見える防雪林の向こう、線路がカーブして音威子府方面へ消えている。
踏切が近づくと、枕木のにおいが強くなる。
木と油が混じった独特の香りだ。
線路を渡るとき、一両だけの列車がゆっくりと音威子府に向かって過ぎていくのが見えた。
乗客はほとんどいないようだ。
運転士がこちらに気づいてか、小さく手を挙げてくれた。
音威子府の町が近づくにつれて、また家の数が増えてきた。
遠くで犬が吠えている。
煙突から薄く煙が立ちのぼる家もある。
どこかで炭火でも焚いているのだろうか、焦げた木の匂いが流れてくる。
音威子府駅に着く頃には、太陽はかなり高くなっていた。
駅のホームには、ほのかに鉄の匂い。
少し埃っぽさも混じる。
切符売り場の窓口は静かで、改札も人影はまばら。
ホームのベンチに腰を下ろして、靴の紐を解く。
足がじんわりと疲れている。
靴下を脱ぐと、土と汗のにおいが混じり、少しだけ旅を終えた実感が湧いた。
あたりは依然として静かだが、町の中を歩くと、どこからか小さな子供の声や、自転車のベルの音が聞こえてきた。
旅人としての私は、ここでひとときの区切りをつける。
北の初夏の、湿った空気と穏やかな風とともに。












